こんにちは、栃木県栃木市で注文住宅を手がけている松本住建です。私たちは、地域に根ざした工務店として、お客様一人ひとりの暮らしに寄り添った家づくりをお手伝いしています。
今回は、家づくりを検討されている方にとって見逃せない重要テーマ「耐震等級3」について、表面的な情報ではなく、実際の構造的な中身に迫りながら、後悔しない住まいづくりのための視点をお届けします。
耐震等級とは?その意味と目的
「耐震等級」とは、建物が地震にどれほど耐えられるかを数値で示した基準で、「住宅性能表示制度」に基づき、以下の3段階に分類されます。
- 耐震等級1:建築基準法レベル。数百年に一度の大地震でも倒壊・崩壊しない最低限の安全性。
- 耐震等級2:等級1の1.25倍の耐震性。主に学校・病院など、避難施設としての役割を持つ建物。
- 耐震等級3:等級1の1.5倍の耐震性。消防署・警察署など、防災拠点となる施設に必要とされる水準。
最近では、戸建住宅でも「等級3」を謳う会社が増えてきました。しかし、実はこの「等級3」には2つの取得方法があり、中身によって耐震性能に大きな差が出ることをご存知でしょうか

「耐震等級3」には2つの取得方法がある!
耐震等級3は、見た目の表記は同じでも、取得方法が異なることで実質的な安全性が変わります。以下の2種類があります。
- 壁量計算による耐震等級3:簡易的な計算方法
- 許容応力度計算による耐震等級3:構造設計者による本格的な構造計算
どちらも「等級3」と表記されますが、構造上の信頼性・強度・変形抑制性能などに大きな違いが生じます。
壁量計算とは?その仕組みと限界
壁量計算とは、建築基準法に準拠した、木造住宅向けの簡易的な耐震確認方法です。主に以下の特徴があります:
- 耐力壁の「量(㎡数)」で地震への備えを判断
- 壁の配置バランス(偏心率)を大まかにチェック
- 接合部の強度や基礎・梁・柱の検討は行わない
- 構造設計者による詳細な検証は不要
つまり、あくまで最低限の安全性が担保されているに過ぎず、建物の変形や損傷の予測まではされていないのです。

許容応力度計算とは?精密構造設計の全貌
許容応力度計算は、建物にかかる荷重や地震力を「数値」と「理論」に基づいて検証する、最も信頼性の高い構造計算です。
専門の構造設計者が以下の項目を綿密に検討します:
- 地震力・風圧力に対する構造部材の応力解析
- 柱・梁・土台・接合部それぞれの許容応力度の比較
- 建物全体の変形性能(層間変形角)や安定性の評価
- 繰り返し地震や劣化を踏まえた耐久設計
つまり、「本当に倒壊しない根拠」を証明できる方法こそがこの許容応力度計算なのです。

どちらを選ぶべき?性能とコストのバランス
では、住宅設計においてどちらを選ぶべきか。その判断基準は、性能・安心・コストのバランスにあります。
許容応力度計算のメリット
- 構造の安全性が数値で明確になる
- 建物の変形・破損のリスクが抑えられる
- 将来的な価値(中古住宅評価や長期優良住宅取得)にも好影響
デメリット
- 設計コストが10万〜30万円程度上乗せされる
- 間取りに制約がかかる場合もある(吹き抜けなど)
命を守る構造において妥協するべきかどうか。これは、価格だけでは測れない本質的な判断ポイントです。
「耐震等級3」に潜む誤解と現場のリスク
実際にお客様からよく聞く声として、以下のような誤解があります:
- 「耐震等級3って書いてあるから安心だと思っていた」
- 「大手メーカーだから、当然強い構造だと思っていた」
しかし、熊本地震では、壁量計算で取得された等級3の住宅が倒壊した事例も報告されています。構造計算の有無が明暗を分けたのです。
特に注意すべきは、以下のような間取り・デザインです:
- 2階の大きな張り出し
- 大開口の窓・吹き抜け
- 斜め壁や変形プラン

見積書・設計図での見分け方
お客様が見落としがちなポイントとして、書類からの判断があります。以下をチェックしましょう。
- 構造計算書がある → 許容応力度計算
- 壁量計算書のみ → 簡易的な方法の可能性
- 構造設計一級建築士が関与 → 高度な設計の可能性
- 住宅性能評価書に「許容応力度計算に基づく」と記載 → 高精度
気になる場合は、「この等級3はどちらの計算方式によるものですか?」と担当者に尋ねることが非常に重要です。
まとめ:本当に安心な住まいとは
「耐震等級3」というラベルに惑わされるのではなく、その根拠と中身をしっかり確認することが、後悔しない住まいづくりの第一歩です。
命を守る構造こそ、表面では見えないからこそ、丁寧な検討が必要です。
私たち松本住建では、許容応力度計算を標準でご提案しています。構造から暮らしの安全を守る提案を、これからの家づくりに取り入れてみてはいかがでしょうか。