新築リフォーム家づくりは松本住建

建てる前に知っておきたい!素材を選ぶということ②:断熱材編

— 建てる前に知っておきたい!性能と暮らしの関係 —

こんにちは、栃木県栃木市で注文住宅を手がけている松本住建です。地域密着の工務店として、お客様の暮らしを豊かにする「住性能の根本」に目を向けながら、快適で経済性が高く、長寿命な住まいづくりを追求しています。

シリーズ第2回となる今回は、家の性能に大きく関わる「断熱材」について取り上げます。断熱材は、家を建てた後にはほとんど見えなくなる素材でありながら、住まいの快適性や光熱費、健康、耐久性、そして資産価値にまで影響を与える重要な要素です。

前回の「木材編」では、構造体の材質によって住まいの品質が変化することをお伝えしました。その延長線として、本稿では断熱材の種類や選び方、施工品質との関係、コスト、法規制、省エネ基準、そして施工後の長期的な効果について整理し、家づくりを検討中の方が押さえておくべき重要ポイントを体系的に解説します。

断熱材について正しく理解することは、住宅の性能を“図面上の数値”から“暮らしの体感”へと変化させるための大切な視点です。本稿がその一助になれば幸いです。


■ 断熱材とは何か?そしてなぜ必要か?

断熱とは文字通り、“熱を断つこと”。
住宅における断熱の目的は、以下の2点に集約されます。

  1. 外気温の影響を抑えること
  2. 室内の温度を逃がさないこと

これにより、

  • 夏の冷房効率向上
  • 冬の暖房負荷低減
  • 室温の均一化
  • 結露抑制
  • 健康リスクの低減
  • 光熱費削減

という実利のある効果が得られます。

断熱材は、高性能ガラス、サッシ、気密、換気と並び、住まいの性能を決める5大要素のひとつとされています。その重要性は、国の省エネ政策にも現れています。2025年からは省エネ基準適合が義務化され、住宅性能は「数値として担保する時代」に入りました。

それにも関わらず、一般消費者にとって断熱材は“見えない素材”であるため、営業トークの中で語られる機会が少なく、理解されにくい領域でもあります。ここに情報格差が生まれやすく、結果として後悔の原因になることが少なくありません。


■ 断熱材の選択肢は多様だが「3系統」で整理できる

断熱材と一口に言っても種類が多く、原料も形状も性能も大きく異なります。しかし、体系的に整理すると次の3分類にまとめられます。

  • 繊維系断熱材
  • 発泡プラスチック系断熱材
  • 自然素材系断熱材

それぞれメリット・デメリットがあり、価格帯も異なります。ここから系統別に解説します。


■ ① 繊維系断熱材の特徴と用途

繊維系断熱材とは、ガラス繊維や鉱物繊維を綿状に加工したものです。日本における普及率が最も高い分類で、住宅市場ではスタンダードな材料と言えます。

● 代表的な素材

  • グラスウール(ガラス繊維)
  • ロックウール(岩石由来)

● 特徴

  • 不燃性が高い → 火災安全性に優れる
  • 防音・吸音に強い
  • コストパフォーマンスに優れる
  • 密度と厚みにより性能が変化

特にグラスウールは製品の層が分厚く、価格と性能のバランスが良いため、ローコスト住宅~ハイグレード住宅まで幅広く採用されています。

しかし、性能を最大限に引き出すには 施工品質が極めて重要 です。断熱材がしっかり充填されていない、隙間ができている、湿気を吸っている、押しつぶされている、などの状態では性能が保証されません。

● よくある施工トラブル

  • 壁内の電気配線で断熱材が圧縮される
  • 筋交い周囲で断熱材が浮く
  • 防湿フィルムの破れや重ね不足
  • 柱間の寸法と合わずスカスカになる

繊維系断熱材における施工不良は、断熱性能の低下だけでなく、壁内結露やカビの原因にもなります。つまり素材選びと同じくらい施工体制のチェックが欠かせません。


■ ② 発泡プラスチック系断熱材の特徴と用途

発泡プラスチック系は、樹脂を発泡させた断熱材で、細かな独立気泡に空気を閉じ込めることで断熱性能を発揮します。素材によって硬さや吸湿性が異なるため、部位ごとに使い分けされます。

● 主な種類

  • EPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)
  • XPS(押出法ポリスチレンフォーム)
  • 硬質ウレタンフォーム(板材・吹付け)
  • フェノールフォーム

● 特徴

  • 熱伝導率が低く高断熱
  • 吸水しにくい製品が多い
  • 寸法安定性が高い
  • 基礎断熱にも採用される

● 吹付けウレタンの評価

吹付け断熱は現場施工型で、複雑な形状に密着させることが可能です。気密性能が確保しやすく、暖冷房効率向上に寄与します。

ただし、

  • 吹付け厚みの管理
  • 施工時の発泡トラブル
  • シロアリ対策の併用
  • 壁内結露のリスク
  • 地震時の変形・破損リスク

など施工監理が重要です。


■ ③ 自然素材系断熱材の特徴と用途

自然素材系は環境調和型として欧州を中心に関心が高まっている領域です。日本でも高性能住宅を志向する層に支持されています。

● 主な種類

  • セルロースファイバー
  • 羊毛断熱材(ウール)
  • ウッドファイバー(木質繊維)
  • コルク断熱材

● 特徴

  • 調湿性が高く結露リスク低減
  • 吸音性能に優れる
  • 熱容量が大きく夏に強い
  • 施工後の経年沈下が少ない(吹込み密度管理)

特にセルロースファイバーは、壁内に高密度で吹込み、結果として 断熱+調湿+吸音+防音+耐火 を両立します。ホウ酸処理により防虫性能も確保されており、化学防蟻剤に頼らない点もメリットです。


■ 「断熱」と「気密」は切り離せない理由

断熱材は、気密層とのセットで効果を発揮します。断熱材単体では空気の流れをコントロールできないため、気密が担保されていない住宅では性能が発揮できません。

冬の住宅内では暖房によって暖められた空気が壁内に侵入すると、外気温との温度差によって内部で露点に達し、結露が発生します。これが“壁体内結露”です。

結露は以下の劣化原因になります。

  • 木材腐朽
  • カビ発生
  • ダニ増殖
  • 断熱材の機能低下
  • 構造材の耐久性低下

このため、建築基準法や省エネ基準では、防湿層や透湿制御に関する規定が存在します。

高断熱住宅を実現するには、

  • 防湿層
  • 透湿抵抗のバランス
  • 断熱区画
  • 通気層設計
  • 第三種/第一種換気の選択
  • 気密処理

などの「熱・湿気・空気」の統合設計が不可欠です。


■ 国はなぜ性能義務化を進めるのか?

背景には「健康」と「エネルギー」の2つの問題があります。

● 健康面の課題

日本ではヒートショックによる死亡者数が交通事故死の約5倍と言われています。特に高齢者の入浴中事故は寒冷地に限らず全国的な課題です。

高断熱住宅は

  • 室温差をなくす
  • 浴室・脱衣室の寒さを防ぐ
  • 就寝中の寒冷ストレスを減らす

ことにより、健康促進効果が科学的に確認されています。

● エネルギー面の課題

家庭部門のエネルギー消費は全体の約14%を占め、照明・冷暖房・給湯が大半です。高断熱化は省エネの最も有効な手段であり、脱炭素政策とも整合します。


■ コストだけで判断すると何が起こるか?

断熱材は設備と異なり「更新が容易ではない」という特徴があります。壁内に入ってしまえば交換は事実上困難であり、基礎断熱や床断熱も同様です。

つまり断熱は、

最初に“どこまでやるか”が一生を左右する領域

とも言えます。

短期のイニシャルコストで判断すると以下の問題が生じます。

  • 光熱費の増加(累積コスト)
  • 住まいの体感性能低下
  • 結露・カビによる耐久性低下
  • 健康影響による生活の質低下
  • 売却価値の低下

長期的に見れば、断熱材は“住宅性能への投資”です。


■ 海外住宅との比較が示す「日本の弱点」

欧米の住宅先進国では、断熱に関する基準が日本より厳しい傾向にあります。

例:ドイツのパッシブハウス

  • UA値:0.14〜0.20
  • 気密性能:C値0.1cm²/m²以下
  • トリプルガラス標準

対して日本の最低基準は

  • UA値は地域区分・基準値のばらつき大
  • 気密測定義務なし

この差は、住宅の快適性という点で顕著です。
海外では住宅が「資産」ですが、日本では「消耗品」と見なされやすい背景もここにあります。

しかし近年、日本でもZEH、HEAT20、認定炭素住宅など高性能住宅が増えています。その流れでは断熱材の選択が直接、性能に影響します。


■ 断熱材の適材適所とは?

部位により適した断熱材は変わります。

● 基礎断熱

  • XPS
  • 高密度EPS
  • 硬質ウレタン

理由:防湿性と耐圧強度が必要

● 壁断熱

  • グラスウール
  • セルロースファイバー
  • ウレタン吹付け
  • 硬質ウレタンフォーム(工場加工)

理由:充填性・気密性・調湿性の設計が重要

● 屋根断熱

  • 硬質ウレタン板 
  • ボード系断熱
  • セルロースファイバー吹込み

理由:夏の遮熱と熱容量を考慮する必要

このように、素材単体の優劣ではなく住宅の仕様から決めることが重要です。


■ まとめ:断熱は「見えないけれど、暮らしに最初に効く素材」

断熱材は家が完成すると見えなくなります。しかしその効果は毎日の暮らしに現れます。

断熱が適切に設計された住宅は、

  • 冬に暖かく
  • 夏に涼しく
  • 結露が少なく
  • 光熱費が小さく
  • 健康的で
  • 静かで
  • 長寿命で
  • 資産価値が下がりにくい

という、多面的なメリットを生みます。

その一方で、断熱材は単体で完結する素材ではありません。

断熱材の効果を高めるには、

素材 × 施工精度 × 気密 × 防湿 × 通気 × 換気 × 設計

という“総合的な住性能”を考える視点が必要です。

つまり断熱材は、住まいの体感性能を決める“中核素材”です。
設備のように交換できないからこそ、建築前に知っておくことが重要になります。

次回はシリーズ第3回として、
「仕上げ材(内装材)と住まいの空気環境」編
を予定しています。

表面に現れる“素材の選択”が空気質やアレルギー、VOC、住み心地にまでどのように影響するのかを分かりやすく整理していきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。